Vol.31 コールセンターの離職問題を考える。最初の90日の過ごし方 <その3>
コールセンターの離職問題を考えるの“その3”です。
「最初の90日」をどう乗り切るかが鍵!前回は、オペレーターが早期離職してしまう4つのギャップについて説明しました。
その中で書かれていた4つのギャップとは下記のギャップを指しています。
① :(オペレーター) こんなに覚える事が多いの? こんなに難しいの?
② :(トレーナー) なんでこんな人を人事は採用したの?
③ :(オペレーター) トレーナーさんみたいに現場のSVは親切に教えてくれない?
④ :(現場SV) こんなレベルで現場に送り出さないでよ!⇒(トレーナー)これ以上は現場でなんとかしてよ!
前回は①の(オペレーター)が思うギャップ、こんなに覚える事があるの? こんなに難しいの?について深掘りしてみました。
今回は 上記の②~④のギャップについてコメントします。
冒頭の「コールセンター白紙2018」のデータをご覧下さい。これはコールセンターに働く前の前職調査です。コールセンター経験者は全体の約40%で、約60%はコールセンター未経験者です。
前回号の調査のように「高い時給」や「ちょっと興味があって・・」という事で応募してきています。バックボーンは様々なので、そもそも「コールセンターとはどんなお仕事でどんな特殊性があるのか?」をきちんと啓蒙する必要がありますが、まずは詰め込み型の研修をされるのが実情のようです。トレーナーは現場経験豊富なSV出身者がなるケースが多いと思いますが、現場経験が豊富なだけにバックボーンが様々な候補者に対する理解が必要になります。一律の教育というものが基本になりますが、研修スケジュールにはあらかじめ余裕を持った計画を立てる必要があります。途中で遅れている研修生がキャッチアップできる時間や仕組みを用意する必要があります。毎日の研修の最初に前日の振り返り・終了前に本日の振り返り時間を30分でも設けるとか、研修の節目節目での確認テストの実施をするとかなり理解度も深まると思います。どうしても繁忙期中に入社した研修生は一日も早く現場デビューが義務付けられるので、逆に通常の研修よりも時間を削って・スピードUPした研修を受けることがありますが、これはかえって逆効果で結局、現場デビュー後の早期離職に繋がってしまいます。
また、比較的研修中はトレーナーが親切・丁寧に教えてくれますが、現場デビュー後は空気が一変して、「これ!習ったよね!」とか「同じ事二度聞かないで!」とか現場のSVはなかなか厳しいです。常に緊張状態の現場では「褒める!」という要素が不足しているケースが多いです。
管理職研修などで教えるテーマですが、「イソロク指導」という言葉をご存じでしょうか?
連合艦隊司令長官の山本五十六の名言ですね!
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」
時代は変わっても根本は同じです。やはり「人は褒めて育てる」という事が重要ですが、段々とそれが薄らいでいるように思います。現在のコールセンターを取り巻く環境は新人離職率が50%以上というセンターも少なくない時代。過度に腫れ物に触るように接する必要はありませんが、初期研修~OJT~現場デビューまでの一連のプロセスの中で「褒める」という要素を取り入れ、「モチベーション・マネジメント」をする事が重要です。
大手アウトソーサーのベルシステム24では「専門のトレーニングセンター」を設置して、そこで①:コールセンター基礎研修、②:模擬電話訓練、③:敬語の使い方、④:顧客対応研修、⑤:PCタイピング、⑥:実践ロールプレイングなど約80時間のカリキュラムを受講して晴れて現場デビューするそうです。この80時間の研修中も正式採用前ですがきちんと給与は支給されます。
最後になりますが、冒頭の4つのギャップについては各コールセンターでの意識改革と創意工夫で如何様にもギャップを小さくできると思います。
採用難・離職悪化の今だからこそ、初期研修~OJT~現場デビュー後フォローの意識改革・プロセス改善が必要だと思います