Vol.42 実践講座(大阪)の振り返り その2 ~悪魔のKPIと言われるKPIは?~
コールセンターのKPIとは最適な管理・運用する上で重要な指標です。その中でも非常に重要なKPIなのですが、(私が勝手にネーミングしているだけですが)「悪魔のKPI」と呼ぶKPIがあるのをご存じでしょうか?
それは、CPC(コスト・パー・コール)のKPI指標になります。
CPCは電話1本あたりの単価を示すKPIですので、本来は経営指標として最も重要視されるKPIですが、実際には現場でCPCを計算しているコールセンターは少ないのが実態です。毎年100人以上に対してコールセンターの公開講座を担当していますが、受講者にヒアリングすると、実際にCPCを計算しているセンターは10%~20%というのが実態です。では、「なぜCPCを計算しないのですか?」と聞くと、答えとして多いのが「そもそもCPCの存在を知らない」、「なんとなく知っているが、計算方法がわからない?」という方がほとんどです。
本来、コールセンターを所管している経営層の方であれば、「うちのコールセンターの電話1本あたりの単価はどうなのか?」、「トレンドは上昇傾向なのか?下降傾向なのか?」、「上昇傾向であれば何が起因しているのか?」本来であれば、一番気になるポイントと思います。
ただ単に、コールセンター=コストセンターと揶揄して、人件費を下げろ!と号令をかけるばかりの経営層が多い昨今ですが、本来はコールセンターの実態についてKPIを通してきちんと把握し、打ち手を講じる事を指示するのが仕事です。
ここまではCPCの一般的に事について書いてきましたが、冒頭で書きました、「悪魔のKPIとは?」とはいったいどんな意味を持っているのでしょうか?ここからその意味について説明します。
CPCの数値(単位:円)は非常にわかりやすいです。初めに仮に「1本単価:1000円」という現状をコールセンター運営を熟知していない本部長や担当役員に見せると、1本単価:1000円という数字が頭に刷り込まれます。応答率、サービスレベルや稼働率などある程度KPIの意義を理解しないと現状がわからないKPIと違って、一目で高い・安いが判断できますので、上層部にとっては複雑なコールセンターKPIの中でもわかりやすいので飛びつかれる傾向があります。
そこで、あまり理解の無い上司・役員に一度CPCを見せてしまうと、毎月のように「CPCはどうなっている?」、「(50円でも上がった場合は)、どうして上昇したの?理由を報告しなさい!」と結構面倒な事になります。
例えば、繁忙期前に新人採用した場合は、人件費コストだけかかって電話の処理件数には貢献しませんので、大きくCPCが跳ね上がりますし、逆に繁忙期のピーク月などはキャパ以上のコールを処理する事になるので、CPCが大きく下降する事になります。
このように、CPCは月単位での推移を細かくチェックするというよりも、冒頭のグラフにあるように、年度単位のトレンド推移を追っていく指標です。
1ヶ月単位での上下動に一喜一憂してしまうと、段々上層部も新人採用したらCPCが上がる。では、新人の採用を抑制すればCPCは下がると思って、必要な採用申請すら却下しかねない事態になるリスクがあります。また、一度経営陣に報告すると、「他のKPIはいらないから毎月CPCだけ報告しなさい!」という事態も起こります。
上記の理由から、私はCPCのKPI指標を「悪魔のKPI」と名付けています。
上手にCPCの上昇要因(処理時間の上昇・稼働率の低下・人件費増など)・下降要因(処理時間の減少・稼働率の上昇・本社配布経費の減少など)を分析して、実施した運営施策の効果検証や運営の舵取りに使用してもらえば良いのですが、毎月の10円上がった・下がったの推移だけにとらわれると本末転倒になってしまいます。(CPCは運営施策・経営状況を映し出す鏡である!)
非常に重要なKPI指標ではありますが、上層部の報告の仕方・啓蒙の仕方次第では「悪魔のKPI」になってしまうリスクがありますので、慎重に運用を考えてもらいたいKPIの一つです。