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VOL.93 新シリーズ:コールセンターのROI講座 ~その1~

投資対効果1枚目
前回ご案内しましたように今回から「コールセンターのROI(Return On Investment)」についてシリーズでお届けしていきます。
昨年のコロナ禍の中、各コールセンターでも在宅勤務体制へいち早くシフトしているセンターもあれば、検討だけでなかなか進捗しないセンターも多くあるようです。また、在宅勤務体制へのシフトと同時並行に検討されているのが、コールセンターのデジタル化です。FAQシステム、チャット(ボット)システム、音声認識系ソリューション、AIソリューションなどは今やコールセンター運営支援システムとしては欠かせないシステムです。
しかし、一声数千万の投資になってきますので、「便利なので導入したい!」、「他社も使っているので・・」、「導入したら効果的そう・・」という曖昧なアピールだけでは経営層の承認が得られないのも現実です。やはりポイントは、投資対効果(ROI)をきちんと訴求できるかどうかにかかっていると思います。このROIの訴求があまり効果的でないために、最終的に経営会議で承認されなかったケースは良くあります。そこで今回から「コールセンターのROI講座」としてポイント解説していきます。しかし、ブログでは解説しにくいテーマでもありますので、なるべくポイントを抑えて有益な情報をお届けしていきます。
 
代表的な事例として現在、エクセルや紙ベースのFAQ運用をFAQシステムに乗せ換えを行いたいケースを考えます
●効果の算定指標は適切か?
効果の算出にあたり、まずほとんどの方がピックアップするのが「生産性効率:AHTの削減効果」だと思います。これはFAQシステム導入効果の欠かせない要素の一つですので、これはしっかりと目標の削減効果を3段階ぐらいに分けて数値化していくべき効果指標です。次にFAQシステムの運用の仕方次第ですが、社内だけでは無く、社外のお客様向けにも提供できれば「コール数削減のコスト削減効果」にも大きく貢献できます。コールセンター白書2020の中でも、お客様が問題に直面した際にその会社のHPのFAQをまず参照しに行ったという割合が約70%ありますので、もはや自社のHPでFAQを開示・提供しない会社の方が珍しい状況です。HPへのアクセス数・FAQページへのアクセス数・解決率などを参考に「コール数削減:コスト削減効果」もしっかりと効果として計算するべきです。ではこの2つの効果でFAQシステムの効果の算出は十分かと言うと、まだ他にも効果指標があるはずです。
FAQシステムは新人離職率の低減にも効果を発揮するはずです。新人離職の大きな要因として、入社後の詰め込み型の座学研修を経て現場で着座対応する際に、わからない点は都度都度SVに手上げで質問しなくはいけませんが、自分一人での自己解決が実感できないというストレスが早期の離職に至る要因の一つという事は以前から指摘されています。そんな自己解決の実感を早めてくれるのが社内でのFAQシステムになります。最近の事例ですが、在宅勤務体制を視野に入れて、新人研修の際のビデオ映像をテーマ毎、質問内容に合わせてライブラリー編集していつでも・どこでも視聴できるFAQコンテンツの提供で、新人離職率の低減を実現したセンターもあります。新人・中堅層の離職防止にも貢献する事が期待できますので、ここの効果も盛り込みたい要素です。更には、正確かつ迅速な応対による応対品質の向上により顧客満足度の向上、NPSの向上、売上の向上にも貢献するはずです。
FAQシステムというと、どうしても生産性の向上:AHT削減とコール数削減に目が行きがちですが、他の効果指標にも着目して効果を算出する必要があります。

投資対効果 2枚目
●投資費用の見積は適切か?
次に投資費用の見積ですが、ここも適切に見積もられていないケースが散見されます。一番大きな投資費用はシステム導入時のイニシャルコストと思いがちですが、決してそうでは無いです。例えばわかりやすくざっくり計算になりますが、FAQシステムのイニシャルコスト:1000万円、年間の保守費用:100万として投資費用が初年度:1100万、2年目から100万・・・・になるかというと決してそうでは無いです。
FAQシステムの運用には「ネタだし調整⇒FAQ作成⇒分析⇒検証⇒新規FAQ作成・削除作業・・・」など結構な工数がかかります。初年度は最低でも2名のアサインが必要だと考えると、人件費:500万X2人月=1000万/年の費用が必要になります。2年目以降も同様に2人月の工数がかかるとすると、人件費は最低でも毎年年間1000万必要になります。FAQの運用は主にベテラン社員が行う事を考えたら、もっと高い人件費がかかるかも知れませんし、もっと高い運用コストになるかもしれません。しかし、FAQシステム導入稟議の時点で、このFAQ専任の人件費・メンテナンスコストを見積もらずに、導入後に片手間のSVリソースだけで運用しているようだと効果も半減してしまいます。そして、このような必要な工数費用も計上しておかないと、正確な投資対効果を図る事が難しくなります。
 
今回は、概論だけに留めましたが、次回は具体的な計算根拠やシミュレーション数値を用いながら解説したいと思います。

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2021年01月13日 10:00
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