Vol.58 コールセンター白書2019の考察~SV昇格時には別途専用の研修は必要か?~ <その7>
では、コールセンターの重要な要のSVを取り巻く環境にについて、昨年に引き続き「コールセンター白書2019」から考察をしていきます。
冒頭のグラフをご覧下さい。これは「SV/リーダーになるために別途研修やトレーニング・OJTなど何らかの指導を受ける機会があったか」を聞いた質問結果です。
実に驚くのは全体の約34%(3人に一人)は、現場で何の研修・OJTの無いままSVの業務を行っている事です。多分背景としては、優秀なオペレーターがSVに昇格する事になりますが、オペレーターとして優秀だからSVとしてもできるでしょう?という甘い考えが現場にあるのか?
または、どんな研修・教育をしていいかわからないので、そのまま放置されているのか?という状況が想定されます。
SVを任せる際には、本人の希望ややる気の有無も重要ですが、それを補完するうえでもSVとしての専門の教育が重要です。業務知識があり、適性を評価したうえでアサインしているからという安心感から必要性を感じていないのかもしれませんが、オペレータとSVはまったく異なる業務ですのでSV就任時の教育は重要です。
・モニタリング&フィードバック・・・ヒアリングポイントやコーチング技術も必要です。
・KPI管理・・・オペレーターとは全く異なる立場から複数のKPI管理が必要です。
・稼働管理・・・コール量予測、必要人数計算、シフト配置など専門的な知識が必要です。
・評価管理・・・オペレーターの業績・品質管理を行う上で評価管理の仕組みと運用の理解
・人材管理・・・定期面談を通じてコーチング&フィードバック術を習得する必要がある。
重要業務を簡単に列挙しただけでも上記のタスク・スキルが必要になるのがSVです。オペレーターの延長線上では考えられません。
★実際に、教育の充実度は、職場の推奨意向から職場へのロイヤルティを測る、eNPSへの相関がみられ、社内外の研修を受講したSVは-46.7と比較的高く、トレーニングを受ける機会がなかったSVは-63.4と低い結果になりました。実に20ポイント以上の差が発生しています。
研修を受講するという機会を得ることで、自分は期待されていると自負することができ、ロイヤルティを高めることにもつながるはずです。
次に、理想のSVについてフリーコメントで聞いた結果を見ても、自ら志願したSVと周りに説得されたSVでは、同じようなことを書いているのですが、表現やスタンスに違いがあります
自ら志願したSVはチームを引っ張ろうとする意志の強さが感じられますが、周りに説得されたSVは周囲が受け入れてくれる存在を目指し、役に立とうとします。
後者の方が、上司にとっても扱いやすく、オペレータにとっても接しやすいかもしれません。しかし、業務改革を推進したり、困難を乗り越えるフェーズにある現場では本人が重荷に感じることが容易に想像できます。
SVの一挙手一投足・人柄・パフォーマンスがオペレーターにも直接の影響力を持ちますので、SVの質がそのままそのコールセンターの品質と価値を決めると言っても過言ではありません。優秀なオペレーターがSVに昇格するケースが多いと思いますが、本人の意欲が高くても、やはりSVに対する専門の教育・人材育成を実施していかないと、いつまでたっても一人前のセンターにはならない事を認識して、教育・研修がなおざりになっているセンターは今一度自社の教育体制を見直すきっかけになればと思います。
⇒ 「コールセンター白書2019」ではより詳細にSVの意識調査やアンケート結果が説明されています。内容に興味がある・購買希望の方は下記を参照して下さい。
2020年01月15日 10:22