Vol.28 コールセンター白書2018から見るコールセンターの今! <最終回>
今回でシリーズ6回目になりますが、「コールセンター白書2018」の考察は一旦今回で一区切りとします。まず、考察シリーズ<その1>で紹介した興味深いデータをもう一度冒頭のグラフで紹介したいと思います。
これは、5年前の2013年と今年2018年の「コールセンター運営上の課題は何か!」というデータを比べてみたものです。そして、この5年間で特に大きな変化を占めている3つの項目に着目して紹介しました。まず、「オペレーターの採用・育成」に対する課題認識は、5年前の23.6%から今年は57.3%と実に2倍以上になってます。同じように、「スーパーバイザーの採用・育成」についても、5年前の32%から、今年は55.2%と、やはり課題認識が2倍近くになっています。
また、「オペレーターの定着率向上」についても、5年前の17.8%から、今年は37.1%と、やはり2倍以上の課題認識になっています。
いづれも、昨今の多くのコールセンター管理者の悩みの種になっている「採用難」・「離職の悪化」を反映している結果だと思います。
長年に渡り、トップに君臨していた「品目向上」を追いやり、「オペレーター・SV」の採用難・育成難がワン・ツー状態になっています。
今年最後のブログになりますので、上記を踏まえ来年2019年の未来予想を少しだけしてみます。
● チャットボットやFAQシステム、音声認識システムの導入が一層現場では進んでいくと思います。そして、導入して6ヶ月ぐらい過ぎると、「どうも上手く効果が上がっていない?」、「最新システムを導入したのは良いが、運用が最適化されていない?」という事に気づく年になるのではないでしょうか? そこで、着目されるのが「ナレッジマネジメント」、「業務設計・プロジェクトマネジメント」というテーマが改めて見直されるような気がします。導入ありきで最新システムを導入するコールセンターが多いのも実情です。きちんと「ナレッジマネジメントやプロジェクトマネジメントのPDCAを回す」という基本部分が欠落している場合が多いですので、この分野が改めて見直される年になるような気がします。
●もう一つは、今年2018年は「改正派遣法・改正労働契約法」のダブル改正があって、今後雇用の有期から無期雇用への流れが進んでいくと思います。そうなると、一層重要になっていくのが、「人材教育・育成」になるでしょう。最近ではやっと「AI導入=コールセンターの無人化」という過大妄想が少しづつ払拭されてきているように感じます。
某大手銀行さんのAI:ワトソンを導入した一番の効果は、処理時間の短縮でも・費用対効果でも無く、新人オペレーターの離職率の改善・満足度UPという講演が印象的でした。
AIという最新システムでもたらせた効果として、新人オペレーターの定着率UP・ストレスの軽減という知識支援によるメンタルな部分に効果を発揮したというのも面白い結果です。
2019年では、如何にして「辞めないコールセンターを創るのか!」、「どのようにして働くオペレーター、SVの満足度をUPさせていくか!」という点に焦点が一層あたると思います。
そういう意味では、コールセンターの人材教育・育成体系・運用の見直し・整備に焦点があたる年になると思います。
今後改善の目途が立たない「採用難」について、コールセンター管理者が真剣に考えていくのは、「採用が厳しいなら・辞めないコールセンターにしよう!」ということだとおもいます。
今年2018年も「さつき先生のコールセンターのちょっといい話」をご愛読いただきありがとうございます。来年も、現場の皆さんが「ちょと役に立つなぁ!」と思えるテーマで掲載を続けていきますので、宜しくお願いします。