Vol.69 新型コロナウイルス対応 最前線レポート ~その4~
リックテレコム社発刊のコールセンタージャパン誌(以下CJ誌)の最新号で“コールセンター「脱・3密」の提言”の内容で特集記事がありましたので少し紹介をします。
3密のブラック職場として現場で働くオペレーターや従業員から悲痛な叫びが聞こえてくるコールセンターですが、事務系・システム系業務とは環境が異なり簡単にテレワーク(在宅勤務)に移行できないという声は多く聞かれます。
冒頭のアンケート結果は先日実施されたジェネシス・コンタクトセンターWEBセミナーでの結果です(n=162)。コールセンターがテレワークへの移行のハードル(理由)として一番に挙げられるのが「個人情報の漏洩リスク・セキュリティの問題」のようです。ただし私の印象としてこれは乗り越えられないハードルでは無く、どちらかというと「テレワークをできない!やらない!」理由付けにされている感があります。テレワーク自体は結構前からその必要性が叫ばれてきましたがやはり、セキュリティリスク対応が難しいとして長年にわたり先延ばしされてきた背景があります。しかし、現在ではシステム・ツール類が相当進化しているので、シンクライアントシステム、仮想デスクトップ環境、VPN技術、音声データの暗号化、クラウド環境も整っていますし、コミュニケーションツールの「Slack」や「ZOOM、Teams、SKYPE」などのWEB会議システム、多種多様なeラーニングツールもありますので、テレワークへの移行をしようと思えばできる環境は整えっていると思います。少し海外に目を向けると都市のロックダウンまで実施された欧米各国でのコールセンターの在宅シフトについて、海外のコールセンター事情に詳しいイー・パートナーズ代表の谷口修氏は「各国の大手企業やBPOベンダーはオフショアからオンショア、そしてホームショア(在宅)へと、短期間のうちに一気に舵を切っている」と話をしています。(CJ誌より引用)
しかし、この数ヶ月でお付き合いのあるコールセンター、アウトソーサー15社ぐらいの管理者の方から話を伺いましたが、本格的にテレワークへの移行を決めた・実施中というコールセンターは2社しかありませんでした。10社近いコールセンターは一時的な在宅での待機やメール・チャットなど極一部の業務を在宅でできる工夫をしているものの本格的なテレワークへの移行については「検討中」という状況です。残り3~4社は執務室の消毒・換気、オペレーターの消毒・検温など安全予防策の徹底のみで今までと変わらずオペレーターを出勤させて運用しているという状況でした。
やはり感じるのは、前回のブログでも紹介したチューリッヒ保険のBCP対応や大手銀行・生損保のような資金力がある大手企業でないとなかなか一気にテレワークへの移行は難しいようです。これはコールセンターに限らず日経新聞でも書かれてましたが、「資金力による差。テレワークは大手企業主導、中小企業にはそんな働き方は難しい」テレワークと一言で言っても前回のブログで書きましたが本格的に実施しようとなると数千万単位の投資(システム構築・セキュリティ対策・ノートPC・ヘッドセット・ポケットWifiなど)が必要になってきます。ただ、実施対象や環境面・運用面を工夫すればもっと柔軟的に実施できる方法もいくらでもあるのですが・・。
イー・パートナーズ代表の谷口修氏によると、日本と海外との決定的な差は「(海外では)専門性を有するセンター責任者やスペシャリストの存在、自由度が高くセキュリティやITの展開が行えるリソースの活用などの現場の能力差。また、経営層も含めたマネジメントの明確な戦略決定の有無」と言っています。特に“経営層による明確な戦略決定の重要性”(CJ誌より引用))
まさに私もその通りだと思います。日本のコールセンターの特徴は「オペレーターの非正社員比率が高い。アウトソーサーへの丸投げ意識が高い。顧客対応・サービスへの投資をコストと捉える。コールセンターの専門人材が育たない(育ててない)」
どうも、今回の新型コロナウイルスに端を発したテレワーク・BCP対応の議論は、前々から叫ばれている「コールセンターを取り巻く内外の環境・意識の差」が縮図となって表れているように思います。
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2020年05月27日 11:15